2024年2月にドーハで開催された世界マスターズ水泳大会。
2023年福岡大会での初出場・初優勝から、2024年2月の2連覇までの挑戦の道のりや、世界マスターズのエントリー方法を紹介した前編。
後編では大会直前の準備やドーハでの過ごし方、大会を終えて次の目標について紹介します。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 世界マスターズ水泳大会に興味・関心がある人
- これからマスターズ水泳を始めてみたいと思っている人
- 遠征試合での過ごし方に悩んでいる人
- 試合当日の過ごし方・ルーティンを模索している人
大会直前の準備と調整
練習はレースを意識したメニューを行なっていましたが、日常生活は特別気にしてはいませんでした。
意識的に“いつもと同じ”生活をすることで、自分自身で変にプレッシャーをかけたり、調子が変わったりしないようにしました。
日常生活は意識的に“いつもと同じ”で過ごしていましたが、練習の強度や量は『疲れが残らない』『いいイメージ・感覚』な状態になるようにしていました。
これは良い結果を出したい大会の前に“いつも”行うことです。
- この練習をすると調子が良くなる
- この感覚のときは良いタイムが出る
- 疲労度はこれくらいが良い
ベストな状態・感覚にするために、いま何が必要かを考えるようにしているので、大会直前のルーティンがあるわけではありません。
今回の世界マスターズの前は、大会慣れをしたかったのでレースを多くしており少し疲れを感じていたので、強度の高い練習は少なくして、距離も少なめにしていました。
ただ100m1本全力、200mのブロークンなどレースを意識した練習はしっかり行なっていました。
そのときのタイムと感覚が一致しているか、タイムは上がってきているかなどチェックしています。
今回の大会前は幸い感覚よく、タイムもよかったので、その状態が続くよう疲労と感覚をコントロールする感じです。
“良い感覚”についてわたしの場合は、以下をチェックしています。
- 高いボディポジションで泳げている
- 一生懸命水をかくのではなく、しっかり水をキャッチするだけ
- 疲れていない
この辺の“良い感覚”については人によって様々なので、自分にとっての“良い感覚”はどんな状態か言語化できていると“なんとなく”良い感覚、“なんとなく”悪い感覚が減るので良いと考えています。
とはいえ、メンタルやモチベーションなどそれ以外の要因でいくら調子が良くても本番で結果が残せるとは限りません。
1つでも不安要素をなくすために大会直前の練習はこのように取り組んでいます。
大会当日のルーティン
人と大きく違っているだろうこだわりポイントは『朝のアップは可能な限り1番に入水する』『レースの時泳ぐレーンでアップする』の2つです。
早く入水すれば、人がいないので自由に泳げるし、混む前にアップを終え更衣室も混んでないメリットがあります。
メニューはいつもほぼ同じです。
レースの種目によって、アップで泳ぐ種目を変えるくらいで内容は基本的に同じです。
これはルーティンとしてやっているわけではなく、内容を考えることに時間と頭を使いたくないからです。
そのため混み具合や脈が上がりきっていない、身体が動いていないと感じれば、長め泳ぐこともあります。
短水路の試合で25mごとに列が生じてまともに泳げない時はドリルを減らして、スピード系の内容を増やして、脈上げ、身体を動かすことを優先します。
つまり状況に応じて変えるけど、ベースは同じです。
参考までにいつも行なっているウォーミングアップのメニューを載せておきます。
※50*8t IM.Oのところが100*4t(1’40”)IMになることもあります。
それ以外の過ごし方にこだわりはありません。
お腹が減ればレース時間に応じてゼリー類やご飯を食べるか考え、眠ければ寝るなどその時その時によって好きにしています。
召集についても大会によって、レースの進行スピードや何組前から行うか異なるので大会ごとに臨機応変に対応しています。
海外で大会に出てみたり、海外協力隊時代に関わったカンボジアの大会や東南アジアの大会の様子を見るとルーティンでガチガチに固定するより、その場の状況に応じて臨機応変に対応できるかどうかが非常に重要です。
限られた環境の中で自分でコントロールできる部分を把握し、その環境でベストな状態にするには何ができるかを考えるべきです。
これはカンボジアで日本ではあり得ない大会運営を見てきたから、初めてドーハで海外の大会に出たけどトラブルなどに動じずレースに臨めたのかなと思います。
50BaでTake your marksの後、5秒くらいスタートの合図がなかった時は流石に焦りましたが…
ここまで、大会直前から大会当日の準備やルーティンについて紹介しましたが、どちらも共通しているのは『良い状態を把握し、限られた環境でそこに合わせるようにする』ことです。
早く泳げるようになる魔法のようなのルーティンや練習、大会当日のウォーミングアップを教えてもらえると思ってここまで読み進めてくれた方には申し訳ありませんが、そんな魔法はありません。
むしろルーティンは『諸刃の剣』だと考えています。
ルーティンでガチガチにしている人が、万が一そのルーティンを実施できなかったら?
ルーティンが多ければ多いほど、ルーティンを実行できないリスクが上がります。
そのためルーティンは作らず、『良い状態を把握し、限られた環境でそこに合わせるようにする』を推奨します。
ドーハでの過ごし方
大会のためにドーハに行きましたが、大会以外の時間はドーハを楽しみました。
遠征試合の醍醐味はその土地を観光したり、美味しいものを食べたりすることです。
学生の頃はクラブや学校のチームで動いて、自由時間なんてほとんどありませんでしたが、いまはお金も自由時間もあるお気楽スイマーです。
レース以外の時間を観光や美味しいものを食べるなど楽しめるから、マスターズ水泳は楽しいし、遠征試合はもっと楽しいです。
今回は旅行記事ではないので簡単に紹介しますが、詳細なドーハの旅行記は別途作成します。
ドーハでの観光
到着した日に砂漠ツアーに参加しました。
また、レースがない日や早くレースが終わった日に、ホテル周辺や地下鉄に乗って少し離れたところに遊びに行ったりしました。
ツアー参加はGet Your Guideから申し込みができます。
観光客に人気のツアーがパッケージされており、送迎込みの場合が多いのでホテルや空港から出発し、ホテルや空港へ送ってくれます。
今回、わたしがドーハで参加したツアーはホテル送迎の、砂漠でバッシング、ラクダ乗り、サンドボーディングが含まれたツアーです。
朝8時ごろにホテルにお迎えがあり、13時ごろに大会会場で降ろしてもらいました。
費用は約1万円です。
1点注意点としてはドーハで企画・開催されているツアーはほとんど日本語開催されていない点です。
もしかしたら探せばあるかもしれませんが日本語開催のツアーは見つけられなかったので、英語で簡単なコミュニケーションは取れるようにしておくと良いです。
参考までに私が申し込んだツアーのLinkを下記に載せておきます。
ドーハでの食事
他のチームの方と一緒にレストランに行くこともありましたが、スーパーで簡単なものを買ってホテルで食べることもありました。
あとは日本から持っていったお味噌汁とレンジで温めるご飯の日もありました。
ドーハでは中東料理、インド系料理が多くあり、様々な香辛料が使われいている料理が多いです。
あとは激甘スイーツ。これはレース後の糖分補給に最適です。
中東料理を食べるなら、Souq Waqif(スークワキーフ)という市場がおすすめです。
ケバブやフムス、バクラバなどなんでも揃っています。
中東の食事に飽きたり、日本食が恋しくなったらショッピングモールに行くとサラダやおにぎり、日本食をテイクアウトできるところもあります。
おすすめのショッピングモールはCity Center Doha Mallです。
世界で有名なチェーンや中東で有名なデーツのお店も入っているので、ホテルで食事するように調達するもよし、お土産を調達するもよしです。
ドーハでの移動手段
ドーハ中心部はバスと地下鉄が充実しています。
また、大会会場と運営委員会指定のホテル間は無料シャトルバスも出ており、移動で困ることはありません。
ただし、金曜日は礼拝の日らしく、地下鉄(Metro)は14時まで運休しているので要注意です。バスも一部運休しています。
地下鉄(Metro)Mapはこちらです。
そのほか、地下鉄(Metro)の駅からはMetrolinkという無料のバスが出ているので、地下鉄から少し離れたところに行く場合も無料バスで行けるところがあります。
詳細はこちらのLinkより確認してください。
無料バスの利用には条件があり、日本でのSuicaやPasmoのようなICカードが必要です。
地下鉄の乗車券はICカードにお金をチャージし都度利用額を引かれるSingle Journey(2QR)と1日乗車券Day Pass(6QR)の2種類あります。
ICカードは購入時10QRかかります。
Single Journeyは何駅乗っても2QRです。
3回以上乗車する予定があればDay Passを買い、2回までならSingle Journeyで使い分けていました。
地下鉄だけしか乗らないなら毎日Day Passでも良いですが、Metrolinkに乗る可能性があるならICカードを買うことをお勧めします。
次の目標と目標に向けてのステップ
2連覇する準備、狙ったタイムを出す準備はしっかりしてこれたと思っていました。
その一方で、初めての海外遠征試合、遠征先でコンディションが崩れないか、緊張で満足なパフォーマンスができるか心配でした。
結果としては2連覇はできましたが、タイムは積み上げてきた練習と感覚的にはもっと速く泳げる感覚でした。
やっぱり緊張してガチガチな泳ぎで、、、
だけどなんとか気持ちで勝ち取った2連覇だと思っています。
タイム的には満足いきませんでしたが、今回2連覇できたことで、わたしの周りの多くの人が一緒に喜んでくれたし、元気や希望をもらったと言ってくれました。
きれいごとかもしれないけど、わたしは2連覇したかったのではなく、『2連覇することで、周りの仲間たちが元気や希望を抱き、挑戦するきっかけを作ること』がしたかったんだと思います。
だから次の目標は『3連覇!そして、さらに周りの仲間たちと挑戦し続けられる環境を作ること』です。
周りの仲間の挑戦意欲が上がれば、わたしももっと頑張りたいと思うし、その姿勢はさらに周りに伝染すると考えています。
いま、わたしはモチベーションが高く挑戦し続ける仲間に囲まれて恵まれた環境で練習できています。
だからこそ2連覇できたし、2連覇することで少しでも周囲の仲間たちに還元できたのではないかと考えています。
目標に向けてのステップ
①7月まではいろんな種目に挑戦する
今回、背泳ぎ以外の種目も練習し、レースに出ることで、全身を満遍なく動かせるようになってきたし、体力もつきました。
結果として、背泳ぎの感覚も良くなってきているので、狙う大会がしばらくない夏までは様々な種目に挑戦します。
30代区分のうちに50m以上の全種目に出るのが目標です。
24年5月末時点で、残り200m平泳ぎ、400m/1500m自由形のみとなっています。
すでに200m平泳ぎ、400m自由形は6/2に出場が決まっているので、1500m自由形のみ未定ですが近いうちに挑戦します。
②挑戦したいと思えるコミュニティを広げる
お金がないからできない
時間がないからできない
経済的な安定が担保できないからできない
英語ができないからできない
やり方がわからないからできない
実力がないからできない
何かをするときにできない理由を探して、本当にやりたいこと、挑戦してみたいことから目を背けていませんか?
自分ができそうなこと、安定してそうなこと、失敗しなさそうなこと、そんな限られた範囲で物事を選択していませんか?
わたし自身もそういう考えでした。
だから今こそ本当にやりたいこと『周りの仲間たちと挑戦し続けられる環境を作ること』を実現するためにオーストラリアのマスターズ水泳に挑戦しにいきます。
日本でも『周りの仲間たちと挑戦し続けられる環境を作ること』は実現できるかもしれませんが、世界マスターズで海外選手と競い合い、讃え合い、コミュニケーションを取るなかで、世界中に一緒に『挑戦し続けられる仲間』ができたら最高に楽しいだろうなと思いました。
理想は、国内遠征に行く感覚で海外のマスターズの試合に出たり、海外旅行に行った際に何かしらのツアー(今回であれば砂漠・ラクダツアー)に参加する感覚で海外のマスターズの試合に出られるくらい、海外のマスターズの試合のハードルを下げたいと思っています。
その第一歩がオーストラリアでのマスターズ水泳参戦です。
市場調査の気持ちでオーストラリアにニートスイマーとして乗り込みます。
世界中で一緒に『挑戦し続けられる仲間』を増やしていきます。そして、その仲間たちを繋げていきたいです。
まとめ
今回の記事では世界マスターズ水泳選手権2連覇に向けた挑戦についての後編として、大会直前の準備やドーハでの過ごし方、大会を終えて次の目標について紹介しました。
ただ連覇することが目標ではなく、連覇はあくまで手段。
『2連覇することで、周りの仲間たちが元気や希望を抱き、挑戦するきっかけを作ること』が本当に達成したかったこと、今後もそうしていきたいことだと実感できた世界マスターズでした。
この記事のまとめです。
- 自分にとっての“良い感覚”はどんな状態か言語化できると、“なんとなく”調子がいい、悪いが減り、狙った大会で結果を出せる可能性が上がる
- ルーティンはガチガチに決めず、限られた環境の中で自分のベストな状態を作る
- マスターズの遠征試合の醍醐味は観光と現地の食事にある
『周りの仲間たちと挑戦し続けられる環境を作ること』がわたしの人生の目標です。
この記事を読んで、1人でも多くの方が来年の世界マスターズ シンガポール大会に出場したいと思ったり、マスターズ水泳を始めたい、もっと頑張りたいと思うきっかけになれば幸いです。
ひとつひとつの行動はいつもの何気ない一歩ですが、気づいた時には大きく前進しています。
一緒に“挑戦”の一歩を踏み出しませんか?
あなたの“挑戦”を応援しています。
もし練習メニューが知りたい、一緒に練習したい、シンガポール大会の時エントリーをサポートしてほしいなどあれば、各種SNSのDMよりご質問・ご相談を受けますのでお気軽にご連絡ください。
そのほか、ご質問・ご相談も受けますのでお気軽にご連絡ください。
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